穏やかな会談

え、親子が普通に会話しているだけですよ。
ver.2で姉さま死亡後の話ですが。
最近小説を書いてないので、手慣らしです。

「どうした坊や、口数が少ないな」
背もたれに体を預けると、年季の入った椅子はギシリと音を立てながらも危なげなく彼の体を支えた。
椅子の表面を指で辿れば、生活の中でついたのであろう細やかな傷が触れる。
長らく使用されていたらしきそれは、彼の人の平穏な日常生活を体現していた。
突然現れた悪魔に壊されることもなく、主を失うその日まで役目を果たしていたのだろう。
守っていたのだ、たった一人の血の繋がった息子を、生活を。
そうして守って慈しんで育てた青年が今、彼の前に立っている。
「俺がアンタに訊きたいのは一つだけだ」
若々しい怒気や後悔、青い瞳には容易に感情が写される。
感情がむき出しのそれは、色合いといい、中身といい、バローダとは欠片も似つかない。
ネロはダンテに似ていたが、バローダとはあまり似なかったようだ。
それだけのことがダンテにとってはこの青年を疎ましく思うには十分すぎる理由であった。
「スズメはアンタか？」
「マザーグースか？ 懐かしいな、昔はよく姉貴が歌ってくれたもんだ」
駒鳥はバローダ、青年にとっては母であり、彼にとっては世界であった。
スズメが殺し、蠅がそれを見、魚がその血を受けた。
童謡通り駒鳥の死を見て血を受けたものは、けれど頑なに沈黙を守っていた。
蠅も魚も、語る術を持たない。
「なんだ、閻魔刀は教えちゃくれなかったのか」
くつくつと笑う声に確かな嘲りの色を見て、ネロは顔を険しくした。
力が足りない、従えるだけの意志も持たない。
故に彼の人と魔を分かつ刀は、真の意味で青年の従者足り得ない。
従いはするだろう、その血の下に。
守りはするだろう、今は亡き主の命の下に。
だが、それでは足りない。
力で従えたのでもなく、己を認めさせたのでもない、それは魔具とは呼べない。
己が血を分けた息子を嘲る彼の、にぃっと唇の端を上げただけの薄っぺらい笑い方は、書物に表わされる悪魔によく似ていた。
「息子だっつーから期待してたんだがな、所詮はそんなもんか。八歳の女児にも劣る」
「なっ！」
激昂し立ち上がった青年を冷ややかな視線が射抜く。
濁りすぎて逆に澄み切ったような鮮烈な青にネロの体が竦む。
彼の知らない色、そこには何らかの感情、好意や悪意すらなかった。
「姉貴がそいつを振るったのを俺が初めて見たのは八歳の誕生日だった。全身を返り血で濡らしながら、幼い手で閻魔刀を握り悪魔を斬る姿は美しかったよ」
うっとりと想いを馳せるように宙空を見るダンテの目からは、けれどもやはり何の感情も読み取れなかった。
青い瞳には光もなければ陰りすらない。
初めてあったあの夜の、獣の瞳ならまだよかった。
死への恐怖は感じても、これほどネロの精神を脅かすことはなかった。
ぞっとするほどの虚無。
何もないのだ、今の彼の瞳には。
ネロと同じ色合いの目の中には、最早真の意味で何かが映ることはないのだろう。
「質問の答えだったな。ああ、バローダを殺したのは俺だよ」
彼は認めた。
最愛の人を殺めたのだと、血の繋がった実の姉をその手に掛けたのだと、魂の片割れの命を刈り取ったのは自分だと、こともなく認めた。
「な……んでっ……」
「なんで殺したかって？ おいおい坊や、質問は一つのはずだろう？」
ギリギリとネロが握りしめた、まだ人間である左手から血が流れる。
赤い赤い血液、悪魔の血を継ぎ禁忌の果てに産まれた子でも、血は赤い。
それはダンテとて同じはずなのに。
ネロには目の前の男が、自分の父親が、同じ血の色をした生き物のようには思えない。
「まあ、可愛い息子のためだ。答えてやろう」
わざとらしく肩をすくめた彼は椅子に預けていた体を前に倒した。
膝の上に肘を乗せ、組んだ手の上に顎を乗せる。
「俺があいつを殺したのはな」
軽薄な笑みがその時、無機質な人形のように見えた。
「愛しているからさ」
凍てついた笑みと虚無を湛えた瞳。
言葉の真偽を図ることが、ネロにはできなかった。

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拍手返信

最近更新がなくてすみません。
ちょっと就活やら卒論やらで鬱スイッチが入ってしまいまして……。
あと企画終わったからちょっと気が抜けたのかも。
そろそろver.2のアフターストーリーでダンテとネロが喋っているだけの話でも書こうと思っているのですが、需要がないですよね知ってます。
あともう夏なので海ネタも書いておきたい。
次の拍手はみんなで海にでも行ってもらおう。
あと、通常設定のDMC3ネタもちゃんと書きたい。
えーと、ケルベロスはやったから、アグルド？
ギガピードはやるべき？
魔具にならなかったから印象薄いけど、ボスラッシュにもちゃんといたし。
まあそれを言ったらボスラッシュにはヘル＝バンガードさんもいたけど。

続きからはコメント返信です。
無言パチパチの方も、いつもありがとうございます。

＞7月4日　12時　紅蓮様
コメントに気づいてからすぐに確認したのですが、私のパソコンには普通に表示されていました。
念のためその後再upも致しましたが、また不具合がございましたらお知らせください。
ご指摘ありがとうございました！

＞7月10日　0時　まがり様
初めまして、まがり様。
そんなにベタ褒めされると照れます、とてつもなく照れます。
私を褒め殺すおつもりですか！
べ、別に嬉しくなんか、あるんだからね！（微妙なツンデレ
まだまだ拙い文章ですが、まがり様の感性の琴線に少しでも触れられることができたのであれば幸いです。
DMCをさらに好きになってくださったとは、本当に嬉しいです。
お姉さまのキャラは書いていてすごく楽しいです。
ダンテの行き過ぎたシスコンも書いていて楽しい、まさに私得。
エログロOKなのはとても嬉しいです！
当方、グロがなければエロを書いていて物足りないという、ちょっと間違った価値観の持ち主なので、ついて来て下さる方には感謝感激雨あられです。
一人のDMCファンとして、まだまだ頑張って活動してまいります。
コメント下さると天木は単純にできていますので、わかりやすく舞い上がります。
だからそんなにこっそりしなくていいのよ？
まがり様もお体には気をつけてください。
コメント、ありがとうございました！

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更新

TEXTに『教育は計画的に』をupしました。
これで一周年記念リクエスト企画は終了です！！
いやあ、地震やらなんやらありまして、実に五ヶ月かけてリクエストの消化と相成りました。
かなり遅くなって申し訳ありません。
もうスライディング土下座でもジャンピング土下座でも、なんでもするから許して下さい。
リクエストの方も、完璧にリクエストに沿えているかいつも不安で、コメントありがたいです。

先週更新できなかったのは、試験受けるため実家に帰っていたからです。
うんまあ就職活動的な、ね。
就活も卒論も、今すぐ逃げ出したいです、ホント。
あいきゃんふらいしたい……。
何処か遠くへ行きたい……。

大丈夫、私は今日も頑張るよ！
トリエラで締めておきます。

拍手返信

夜に蚊がうるさくて睡眠が阻害される今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
寝入りばなに耳元に現れるのはいい加減にしてくれ。
何匹潰せば蚊はいなくなりますか？
最近は近くを飛んでいる奴ならば、片手で掴めるようになってきました。
すごく、いらないアビリティです。
拍手を換えた直後はクリック数が半端ないです。
更新日は三桁とかマジぱねぇ。
こんな辺境サイト見てる人いるんだなぁと、しみじみ感じます。

さて、続きからは拍手お返事です。
コメントなしの方もありがとうございます。
 

6月14日　23時
＞イリス様
お久しぶりです！
半魔家族を気に入っていただけて嬉しいです。
実は拍手小説で一番最初に思いついて書き上がったのがアレだったということは、ここだけの秘密です。
母子に混ざりたいけど自然に混ざれない！でも二人とも可愛い！そんなダンテが大好きです。
日参だなんてそんな、週一ペースでちまちま更新なので何となく申し訳ないです。
アザゼルさんは原作アニメ共に面白いですよね。
ちっこい悪魔たちには可愛い物好きの血が騒ぎます。
コメントありがとうございました！

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更新＆拍手返信

CLAPの小説を取り替えました。
今回はちょっと多めです、数だけ。
あんだけ言ってたのにMEMOのネタとは関係ないよ！
最近拍手お礼小説を全然換えてなかったので、頑張りました。(｀・ω・´)キリッ
よんアザの10話が神すぎる。
9、10話ともに神回認定でいいと思う。
さくまさん可愛いよ、アザゼルさんとべーやんもふもふ、もっさんも一緒にもっふもふ、オセくんとグシオンもふもふー、ルシフェルさんもふふー、あ、アンダインさんと某蜥蜴はいらぬ、もふもふしてないから。
悪魔が可愛過ぎて生きるのが辛い。

続きからコメントお返事です。
無言拍手の方もいつもありがとうございます。

6月13日　23時
＞ニナ様
お久しぶりです。
ご満足いただけたようで嬉しいです。
ネタを小説に起こす機会を与えて頂いて、楽しかったです。
こちらこそ企画にご参加頂き、感謝しています。
コメントありがとうございました！

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